「AI時代のPdMの価値とは?」「AI時代のPdMに求められることは?」という問いをよく聞くようになった。
デリバリーが効率化されたことによりディスカバリーの重要度がより上がった、もっとビジネスを見ていかないと、そもそもPdMが不要になる——そういう発信や議論をよく見かける。それぞれのPdMがスタンスをとって発信しているのでどれも一理あるなと感じる。
模範解答は無い問いだと思っているので、自分もこの問いに向き合ってみた。ここ最近色々と考えながら今の自分なりの答え(というか仮説)に辿りついたので思いのまま書いてみる。
それは「AI時代のPdMに必要なのは、PdMであろうとするのをやめること」ではないだろうか。
職種はただの「ラベル」にすぎない
「AI時代のPdMの価値とは」という問いについて考える中で、そもそもPdM、エンジニア、デザイナーなどの「職種」とは何だろうと考えた。
僕は組織設計のための便利な道具だと思っている。組織のリソースを無駄なく活用するため、ミッションや担当領域を明確にするために貼ったラベルが職種や肩書きだと考えている。
ラベル(職種)には採用面やキャリア面などで市場全体の共通言語としての機能があるので不要なものであるとは思っていないが、ラベルの名称(職種名)自体には価値がないはずである。
僕がPdMであることに価値はない。僕がPdMとしてやったことには価値がある(ものもあるし価値がなかったものもある)。
AI時代、職種(ラベル)に紐づくものが変わる続ける
職種にはミッションが紐づいており、ミッションにタスク(やること)が紐づいている。

PdMは事業・組織のフェーズによって求められる領域の重心は変わるが、ここ数年の生成AIの急速な進化により、特定領域の効率化が進んでいる。そしてこれからも続いていく。となると、職種に紐づくものも変わっていく。
つまり、今の職種名の定義と未来の職種名の定義は最上位の芯は変わっていないとしても具体の部分は違う可能性が非常に高い。(今と未来との比較をせずとも、5年前のPdMの定義と今のPdMの定義も結構違っているはず)
例えば、現時点ではエンジニアリング領域の方がより顕著であり、「コードを書くこと」がかなり減り、他のタスクのボリュームが大きくなったり、近接領域に染み出しているエンジニアも少なくないと思う。
「私はPdMであり、PdMの仕事はこうだ」という考えはこれからはリスクになる。執筆時点では、PdM界隈の色々な人が
- 「AI時代のプロダクトマネジメントはデリバリーよりもディスカバリーの重要性が高まっている!」
- 「AI時代のPdMに求められることはAIのアウトプットをいかに解釈して、思いを込めて意思決定するだ!これはAIにはできないし、人間だからできることだ!」
と言っている。でもこの先ディスカバリーもAIによって大幅に効率化、代替されるかもしれない。人が決めるよりAIが決めた方が質が良くなるかもしれない。これまでのPdMの定義の範囲で考えていると、もしそのような状態になったときに「仕事が奪われた…私はPdMとして何をすれば良いのだ…」という状態になる。
だから、「自分はPdMである」という認識自体を、手放したほうがいいのではと考えている。だって職種はただのラベルなんだから。

AI時代のPdMに求められること
自分が大切だと思っているのは、今やっていることやこれまでの常識に固執せず、組織・事業のフェーズにおいて「今、何が足りていないか」を見極めて、そこ対してアクションを起こせること。「PdMとして」というのは特に考えなくて良いと思う。
PMMっぽい役割でセールスやCSのサポートをするでも良いだろうし、商談やCS定例を担当しても良いだろうし、AIを活用してエンジニアと一緒に開発しても良いだろうし、他のことをしても良い。そこが組織・事業の課題・負荷になっているならば。
そのような振る舞いをできるようにするために必要な要素は以下の3つを考えた。いずれも抽象的ではあるし、欠けている要素もあるかもしれないが。
- 今や過去に固執しない柔軟性
- 自分が得意なこと、これまでは価値があったけど価値が小さくなっていることにこだわらずに新しい領域に挑戦するマインド。これを阻むのはサンクコスト。いかに「自分がやっていること・持っていることは取るに足らないもの」と思えるかがポイント。
- 頼られる存在になるための人との関係値を構築する力
- 自分の立ち振る舞いが流動的に変わるということは関わる人もそれに伴い変わっていく。協力したい、相談したい、頼りたい、頼って欲しいと思ってもらえる関係になれることが重要。この能力は特定の会社やドメインに依存しない。どの組織でも、どのフェーズでも持ち運べる。AIが代替しにくいのは、むしろこういうポータブルスキルだと思う。
- 課題・仮説を発見し、それに対して試行錯誤する力
- 事業や組織の状況を読み、課題仮説を置き、動く。この一連を回せること。フレームワークというより、習慣に近い。組織と事業の状況を正確に理解する。その上で「ここが課題ではないか」という仮説を置く。仮説でいい。その課題に対し自分が何を貢献できそうかを考え、動く。やりながら仮説検証する。ずれていたら、軌道修正する。
簡単なことではないがこれらの要素の身につけ、レベルを上げていくことがAI時代を生き抜いていくことに繋がると今は考える。
プロダクトマネージャーはプロダクトマネジメントトライアングル(下図)に表現されている領域の多さや定義の曖昧さから「知の総合格闘技」「何でも屋」などと言われたりするが、AI時代こそPdMというラベルにとらわれず、真の「何でも屋」になるべきだと思う。

ちょっとキャッチーなタイトルをつけてみたけど、「PdMをやめる」というのは、PdMの仕事を放棄することではない。PdMというラベル(職種)に囚われることなく、これまでの常識に固執せず、自由に、柔軟になることだ。
